オンラインショッピングの「おすすめ」の裏側:購入履歴データがデータブローカーにどう渡る?あなたの知らない個人情報リスク
オンラインショッピングの便利さと見えないデータの流れ
インターネットでの買い物が当たり前になった今日、多くのオンラインストアでは、過去の購入履歴や閲覧履歴に基づいて「おすすめ商品」を表示するなど、便利な機能が提供されています。これらの機能は、私たちのショッピング体験を快適にしてくれる一方で、私たちが気づかないうちに、私たちの個人的な情報がデータとして収集・分析され、さらにはデータブローカーと呼ばれる事業者を通じて流通している可能性があることをご存知でしょうか。
データブローカーは、インターネット上の様々な場所から個人情報を収集し、それを組み合わせて詳細なプロファイルを作成し、第三者に販売することを生業としています。オンラインショッピングの購入履歴も、彼らにとって非常に価値のある情報源となり得ます。この購入履歴データがどのように集められ、どのように利用され、どのようなリスクがあるのか、そしてそれに対して私たちがどのような対策をとることができるのかについて見ていきましょう。
あなたの購入履歴はデータブローカーにどう使われるのか
オンラインストアは、私たちが何を購入したか、いつ購入したか、どれくらいの頻度で購入するかといった購入履歴だけでなく、どのような商品を閲覧したか、どのページにどれくらいの時間滞在したか、どのようなキーワードで商品を検索したかなど、様々な行動データを収集しています。これらのデータは、通常、ストア内のサービス改善やターゲティング広告、おすすめ表示などに利用されます。
しかし、問題はこれらのデータがデータブローカーの手に渡る場合です。データブローカーは、オンラインストアとの提携や、ウェブサイトに埋め込まれたトラッカー(追跡技術)などを通じて、あなたの購入履歴データを取得する可能性があります。そして、データブローカーは、その購入履歴データを、あなたの年齢、性別、居住地、趣味、関心事、さらには収入レベルや家族構成といった、他の様々な場所から収集した個人情報と組み合わせます。
こうして作られた、あなたの非常に詳細な「個人的なプロファイル」は、広告主やマーケティング企業、さらには金融機関や保険会社といった第三者に販売されることがあります。これにより、あなたは特定のターゲティング広告を頻繁に見るようになるだけでなく、知らない間に信用スコアの算定に使われたり、提供されるサービスや商品の価格に影響を与えたりする可能性もゼロではありません。あなたの買い物の傾向が、あなたの知らないところであなたの評価や受けるサービスに影響を与えている、これがデータブローカーによる購入履歴データ利用の一例です。
購入履歴データが悪用されるリスク
データブローカーが購入履歴データと他の個人情報を組み合わせることで、以下のようなリスクが考えられます。
- 不当なターゲティングや差別: 特定の購入履歴に基づき、あなたが特定の層に属すると判断され、不利な価格や条件のサービスを提示されたり、特定の情報から排除されたりする可能性があります。
- 個人情報の漏洩: データブローカーが収集・保持する大量の個人情報データベースは、サイバー攻撃の標的となりやすく、万が一漏洩した場合、購入履歴を含む詳細な個人情報が一気に流出するリスクがあります。
- 知らない間に作られる「あなた像」: あなたの行動や属性に基づき、データブローカーによって作られたプロファイルが、あなたの実際の姿とは異なる場合でも、それが第三者との取引に影響を与える可能性があります。
これらのリスクは、日々のちょっとしたオンラインでの買い物からも発生し得るのです。
購入履歴データに関するデータブローカー対策
オンラインショッピングを完全に避けることは難しいですし、必ずしもその必要はありません。大切なのは、自分のデータがどのように扱われているかを知り、可能な範囲で自衛策を講じることです。
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オンラインストアのプライバシーポリシーを確認する: 利用するオンラインストアのプライバシーポリシーには、どのようなデータを収集しているか、そのデータをどのように利用しているか、そして第三者に提供することがあるかなどが記載されています。専門用語が多く分かりにくい場合もありますが、特に「個人情報の利用目的」「第三者への提供」といった項目に注目して、データブローカーへの提供の可能性がないか確認する習慣をつけましょう。
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ストアのプライバシー設定を確認・変更する: 多くのオンラインストアやサービスには、自分のデータ利用に関する設定項目が用意されています。「アカウント設定」や「プライバシー設定」といった項目を探し、ターゲティング広告へのデータ利用や、提携企業へのデータ提供に関する設定がないか確認してください。もしデータ利用を制限するオプションがあれば、迷わず無効にすることをおすすめします。
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ブラウザの追跡防止設定を強化する: ウェブサイト上のトラッカーは、あなたがどのサイトを訪れ、何をクリックしたか、どのような行動をとったかといった情報を収集します。これにより、あなたの購入履歴データがデータブローカーに渡る可能性もあります。主要なブラウザには、サードパーティCookieをブロックする機能や、トラッキング防止機能が搭載されています。これらの設定を有効にすることで、ウェブサイトを横断した追跡をある程度防ぐことができます。サードパーティCookieとは、訪問しているサイト以外の第三者(広告会社など)によって発行されるCookieのことで、異なるサイト間でのユーザーの行動を追跡するために使われることがあります。
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不要なメールマガジン登録や懸賞応募は控える: オンラインストアでの購入時などに、メールマガジン登録やキャンペーンへの応募を求められることがあります。これらを通じて提供した個人情報(メールアドレス、氏名、年齢など)が、購入履歴と紐付けられ、データブローカーに渡る可能性があります。本当に必要かどうかを吟味し、安易な登録や応募は控えることも対策の一つです。
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不要なオンラインアカウントを削除する: 利用しなくなったオンラインストアのアカウントをそのままにしていませんか。古いアカウントに紐づいた購入履歴データが、思わぬ形でデータブローカーに利用されるリスクも考えられます。利用しないアカウントは、個人情報が残らないよう、できる限り削除手続きを行いましょう。
まとめ
オンラインショッピングの利便性は、私たちの購入履歴などのデータによって支えられています。しかし、そのデータがデータブローカーを通じてあなたの知らないところで利用され、リスクにさらされる可能性も否定できません。
今日からできることとして、まずは利用しているオンラインストアのプライバシー設定を見直してみましょう。そして、新しいサービスを利用する際には、少し立ち止まって、どのような情報を提供することになるのか、その情報はどのように使われる可能性があるのかを意識してみてください。
これらの対策は、どれも特別に難しい技術が必要なものではありません。日々の少しの心がけと簡単な設定変更で、あなたの個人情報を守るための大きな一歩となります。オンラインでのデータ利用について正しく理解し、賢く対処していくことが、自分自身のプライバシーを守るために非常に重要です。